近年、医療機関に対しても「CFP(カーボンフットプリント)」「CO₂排出量」「環境配慮」について問い合わせや要請が増えています。しかし医療機関は、一般企業と同じ脱炭素対応ができる業種ではありません。
医療機関として無理のないCFP対応の考え方を整理し、医療の質・安全性を損なわない現実的なアプローチをご提案します。
なぜ、医療機関にCFPが求められるのか
医療関連分野は、製薬・医療機器・ヘルスケアサービスなどIFRS S2の開示義務が課される上場企業が多い業界です。これら企業にとって、サプライチェーン上に位置する医療機関の排出量はScope3算定に直結します。そのため、医療機関にもCFP提出が求められ、排出実態を可視化し、取引先のIFRS S2対応を支えることが必要になっています。
医療機関を取り巻く環境が大きく変化しています。取引先や関連事業者のサステナビリティ開示義務化に伴い、医療機関は「排出量データの提供先」として位置づけられつつあります。
サプライチェーン排出量の把握のため、医療機関への製品使用データの提供依頼が増加しています。
Scope3算定の一環として、医療機関のエネルギー使用量や廃棄物データの報告が求められています。
補助金制度や地域脱炭素計画において、医療機関の環境配慮状況の確認が条件となるケースが出てきています。
重要な整理:医療機関が求められているのは経営責任としての脱炭素ではなく、取引・説明に必要なCFP情報であるケースがほとんどです。過度な対応は必要ありません。
医療機関に特有のCFPの難しさ
医療機関は一般企業とは根本的に異なる運営特性を持っています。24時間稼働体制、非常用発電機の維持、医薬品・医療材料の使用制限不可、そして何よりも医療安全・BCPが最優先されます。この結果、排出量の60〜80%がScope3(間接排出)になるケースも珍しくありません。これは削減が非常に困難な構造であることを意味します。
患者の命を守るため、エネルギー使用の削減には限界があります。医療機器の停止は選択肢にありません。
治療に必要な医薬品や材料は、環境配慮を理由に変更や削減することはできません。医療の質が最優先です。
感染対策、災害対応、緊急時対応など、安全確保のための設備・資材は削減対象にできません。
「削減ありき」でCFPを考えると、必ず無理が生じます。医療機関には医療機関に適した、現実的なアプローチが必要です。
CFP算定について誤解されがちですが、算定すること自体が直ちに削減義務を意味するわけではありません。本来の目的を正しく理解することが重要です。
排出量の現状把握
まずは自施設の環境負荷を客観的に知ることが第一歩です。
行政・取引先への説明責任
求められたときに適切に説明できる体制を整えることです。
将来の制度変更への備え
今後の環境規制や補助金要件に対応できるよう準備しておくことです。
明確にしておくべき点:CFP算定は、直ちにCO₂削減の実行や数値目標を医療機関に義務付けるものではありません。医療の質・安全性を最優先しながら、説明可能な整理を行うことが本質です。
医療機関にとって現実的な対応方針
医療機関の特性を理解した上で、無理のない対応方針を設計することが重要です。削減できない排出があることを前提に、説明可能な体制を整えましょう。
無理な削減はしない
療の質や安全性を損なう削減策は採用しません。現実的な範囲での改善のみを検討します。
医療行為・安全性を優先
患者ケア、感染対策、緊急時対応など、医療の本質的な部分は妥協しません。
説明可能な整理を行う
なぜ削減できないのか、医療特性として正しく説明できる資料を準備します。
新しい選択肢
削減が困難な排出に対しては、Scope3オフセット(吸収・除去)という選択肢があります。自然由来のCO₂吸収(Nature-based Solutions)を活用することで、医療の質を損なわずに環境配慮を実現できます。
戦略的CFPという考え方
単にCFPを算定して提出するだけでは不十分です。医療機関には、医療機関に適した「戦略的CFP」のアプローチが必要です。
現状把握と説明のため、適切な範囲で排出量を算定します。
削減できない理由を医療の特性として正しく文書化します。
NbS(自然由来の解決策)で医療の質を損なわない補完を行います。
戦略的CFPとは
FP(排出量)、削減できない理由の整理、吸収・除去(NbS)の三つを一体で設計する考え方です。医療機関の実情に即した、持続可能なアプローチを実現します。
この統合的なアプローチにより、医療の質を守りながら、環境配慮と説明責任を両立させることが可能になります。
Nature-based Solutionsの医療機関向け支援内容
私たちは医療機関の特性を深く理解し、現実的で持続可能なCFP対応を全面的にサポートします。段階的なアプローチで、無理なく着実に進められる体制を構築します。
医療機関向けCFP算定
Scope1・2および主要Scope3の算定を、病院・クリニック・歯科医院・薬局それぞれの特性に応じて実施します。簡易算定から段階的な拡張まで柔軟に対応いたします。
●施設規模に応じた算定範囲の設計
●医療機関特有の排出源の考慮
●段階的な精度向上の支援
「やらなくていい削減」の整理
医療安全を損なう施策は明確に除外し、現実的な改善策のみを整理します。医療の質を最優先した、説明可能な削減方針を文書化します。
●医療特性に基づく削減限界の明確化
●実行可能な改善策のリストアップ
●対外説明用の根拠資料作成
Scope3・自主オフセット設計
自然由来(NbS)のCO₂吸収を活用した、IPCC準拠の考え方に基づくオフセット設計を行います。植林、バイオ炭等、透明性の高い手法をご提案します。
●科学的根拠に基づく吸収量算定
●長期的な持続可能性の確保
●トレーサビリティの明確化
医療機関向け説明資料の整備
理事会・院内説明用、行政・地域向け、HP・対外発信用など、用途に応じた説明資料を整備します。専門用語を適切に扱い、信頼性の高い情報発信をサポートします。
●ステークホルダー別の資料作成
●視覚的に分かりやすい図表の提供
●継続的な更新サポート
医療機関が得られるメリット
戦略的CFPのアプローチを導入することで、医療機関は複数の重要なメリットを得ることができます。短期的な対応だけでなく、長期的な信頼性向上にもつながります。
01
医療の質・安全性を維持
患者ケアや医療安全を一切損なうことなく、環境配慮を実現できます。医療機関の本質的な使命を守りながら対応できる安心感があります。
02
説明責任の明確化
行政、取引先、地域住民に対して、科学的根拠に基づいた説明が可能になります。問い合わせにも自信を持って対応できる体制が整います。
03
将来の制度変更への備え
今後予想される環境規制や補助金要件の変化に、柔軟に対応できる基盤が構築されます。先手を打つことでリスクを最小化できます。
04
信頼性の向上
環境に配慮する医療機関」としての社会的評価が高まり、患者や地域からの信頼獲得につながります。差別化要因としても機能します。
CFPへの対応にお悩みの医療機関の皆様、まずはお気軽にご相談ください。以下のような段階でのご相談を歓迎いたします。
・CFPをやるべきか迷っている
・取引先や行政から求められたが、どう対応すべきか分からない
・まず話だけ聞いてみたい
・他の医療機関の事例を知りたい